東京高等裁判所 昭和59年(ネ)1370号 判決
二 ところで、被控訴人は、昭和五六年一〇月一五日、原審裁判所に対し、浦和地方検察庁検察官(以下「検察官」という。)及び控訴人を共同被告として訴えを提起し、被告検察官に対する関係においては、本件離婚は被控訴人の関知しない間に勇吉がほしいままに離婚届を提出したことによるものであり、被控訴人には離婚意思がなかったとして、本件離婚の無効確認の判決を、また、控訴人に対する関係においては、本件離婚が無効であることを理由に控訴人と勇吉との本件婚姻は重婚に当たるとして、その取消の判決を、それぞれ求めたこと、原審裁判所は、右各請求につき弁論を分離することなく審理を遂げ、昭和五九年四月二六日、被控訴人の右各請求を全部認容する旨の原判決を言い渡し、右判決正本は、いずれも同年五月二日、検察官及び控訴代理人にそれぞれ送達されたこと、控訴代理人は、原判決を不服として、同年五月一一日、当裁判所に対し、被控訴人を相手方として本件控訴を提起したこと、これらの各事実は本件記録上明らかであり、被告検察官が原判決に対し控訴の提起をせず控訴期間を徒過した事実は、当裁判所に顕著である。
三 以上の事実によれば、原判決中、被控訴人と被告検察官との間において、本件離婚の無効を確認する部分は、控訴が提起されなかったことにより、所定の控訴期間の最終日である昭和五九年五月一六日の経過により確定したことが明らかであり、そして、右のとおり本件離婚を無効とする判決が確定したことにより、控訴人においても右判決の効力を受け、本件離婚が無効であることを争い得ないこととなったものである(人事訴訟手続法一八条一項準用)。
控訴人は、被控訴人の前叙本件各請求は、原審被告である検察官と控訴人との両名全員につき合一にのみ確定すべき場合(必要的共同訴訟)であるから、控訴人の本件控訴により原判決中本件離婚を無効とする部分についても確定が遮断されている旨主張する。しかしながら、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合(民事訴訟法六二条)とは、訴訟の目的である権利又は法律関係についての訴えの提起あるいは判決が、各共同訴訟人全員につき合一にのみなされるべきであり、区々となってはならない法律上の必要がある場合をいうのであって、単に事実上又は論理上合一確定の要請があるというだけでは足りないと解すべきところ、被控訴人の検察官及び控訴人に対する原審における前叙本件各請求は、本件離婚の無効が本件婚姻の取消請求の前提問題(先決事項)となっているとはいえ(他方、本件離婚無効の請求は本件婚姻の取消を何ら前提とするものではない。)、法律上はそれぞれ別個独立の請求として別個独立の訴訟物であり、当事者適格もそれぞれ法定されていて、訴えの提起も判決も別個独立になされ得べく、本件離婚の効力についての判断が右各請求についての判断において区々になってはならないという要請は、人事訴訟手続法一八条一項(準用)所定の既判力(あるいは形成力)の拡張を考慮にいれても、現行法制のもとにおいては、いまだ論理的要求にすぎないものというべきであるから、訴訟の目的(すなわち本件各請求)が検察官及び控訴人の両名(共同訴訟人)全員につき合一にのみ確定すべき場合(判決が合一にのみなされるべき法律上の必要がある場合)には当たらないといわなければならない(本件のように、離婚無効の請求と婚姻取消の請求とが一つの訴えを以て提起された場合でも、事案によっては、離婚無効の請求について弁論を分離し先に審理判決することもおこり得るのである。)。
(後藤 奥平 橋本)